定年退職してから釣りに凝り始めた父が、以前からしきりに「アコウを釣って食わせてやる」と言っていたのだけれど、なんとそのアコウがサプライズで朝食にでてきた。ネットで見た深海魚のような見た目とはちがっていて、体中にオレンジ色のおしゃれな斑点がある。直島で釣ってきたらしいから草間彌生の影響が魚にも及んでいるのかと思いきや、もともとそういう模様をした魚らしく、調べてみると瀬戸内ではキジハタのことをアコウと呼ぶことがわかった。キジハタはお上品な白身でおいしかったけれど、次は刺身で食べたいから直前に釣ってくるように言いつけておいた。
地元の海には数は減ったもののボラが生息していて、どうにか水中での生態を撮れないものかと、釣り竿に水中カメラをぶら下げる仕組みを作って海に投げ入れてみることにした。
ソニーのRX0は釣り竿でぶん投げることを想定していないのか、いきおいよく投げ入れると着水のショックで電源ボタンが押されてオフになってしまうので、近場にそろそろと沈ませるくらいしかできずなんの生物も映らなかった。それにちょうどポンプの排水が始まり水中が濁り始めたこともあったから、場所をかえて牛窓港のフェリー乗り場の近くでおなじようにためしてみたものの、潮の関係で魚がそもそも泳いでいないのかなんとも残念な結果におわった。塩まみれになったRX0は後日、なにも知らないマップカメラが無事に買い取ってくれた。
この日は帰省最終日で、18きっぷを使い二日かけて東京までゆるゆる帰ろうという計画を立てていたが、その前にやるべきことはやっておかなくてはいけなくて、平井の名玄でうどんを食べていく。
この日はトッピングコーナーに運よく昆布の細切りが置いてあった。うどんの出汁を取るのにつかった昆布を刻んで無料トッピング用にしたものなので、あるかどうかはタイミング次第だし、おいしくて人気なうえ特に年寄りとタクシー運転手はアホみたいに盛っていくので無くなるのも早い。
名玄のうどんのつゆには「甘い」と「辛い」があり、自分はそれぞれを半分ずつミックスすることをもう二十年も続けている。
電車に乗る前にもう一件、一昨日に散歩で総社市の山中にある魔法神社というかわった名前の神社を訪れていてその由来が気になり調べ物をしようと岡山県立図書館へ行く。前日に丸善を探したけれど岡山文庫の『岡山の伝説』と『岡山の民間信仰』はピンポイントで絶版になっていて、図書館をあたってみるしかなかった。
魔法神社に祀られている魔法様は宣教師の船にまぎれこんで西洋からやって来たタヌキの神様という設定らしいのだけれど、どこでも見かけるタヌキが日本近辺にしか生息していない、世界規模でみるとレアな動物だったなんて昔の人は考えもしなかっただろう。
岡山駅からは山陽線に乗って東へむかう。思いのほか図書館で時間をとってしまったので、途中下車してのブックオフは控えてまっすぐに目的地をめざすことにした。この日はLight Mellow Westというイベントが大阪であり、ちょうど帰京ついでだし、メロウがわからないガールズポップ人間としてはメロウ感覚を知るいい機会だから立ち寄ってみようと考えていた。
夕方には大阪駅に着いたけれどせっかくだからと天満橋まで散歩していたら、cafe orangerieへ到着した頃にはもうイベントは始まっていた。
御大のことはまったく知らないし、初めて聴く曲ばかりだったのでこういうのがlightmellowというものなのかと、端っこのほうでコーヒーを飲みながらおとなしくしているとそのうち、特定の曲になるといい曲だーみたいなことを言いつつ店の外から急に走ってきて、原曲には入っていない架空のハンドクラップを入れたりしてDJブースの前でひとしきり盛り上がった後、またすぐ店外に出ていくという行為を繰り返す謎のグループがいることに気がついた。他のlightmellowファンボーイたちは御大来阪ということで、聖書を手にして神を見つめるような視線を送るばかりなのに、そのあやしげな集団はそれほどでもないようだし、そもそもイベントに来ているはずなのにほとんど店の外にいること自体がまずおかしい。
その後、仕事の緊急電話が入ってしまい、店の外に出て冷や汗をかきながらの長電話を終えてまた店内に戻ろうとした時、ドア横にたまりイベントそっちのけで、ノートPCを開き音楽をかけながらディグの成果について話している集団を見てピンときた。
「すいません、もしかしてlightmellowbuの方々ですか」
なぜそれをという反応がありつつも、鯔を愛する男だと名乗ると、よくブキーアイドルさんと絡んでいる人だという認識を台車さんが持っていてすぐに気づいてくれた。そしてタイさん、らるぷりさん、同じく東からやってきていた方便さん、それからガルポのCDをググるとよくでてくる謎のブログ「90年代シティポップ記録簿」の主ハタさんを紹介してくれた。みんな佐藤聖子や黒沢律子などの話が通じるのでいちいち説明する必要がなく気が楽で、ハタさんの口から大本友子の名前がでた時にはおもわず抱擁をしてしまった。
それからはもう店内には入らず、タイさんと陸繋島の話をしたり、らるぷりさんとゆめタウンでおなじみイズミグループの話をしたりしつつ、東京にはあげはさんなどDJ中に歌う文化があること、ガールズポップ概論といってレジュメ配ってDJをしたときに図書館ディグがメインの、自分よりも頭おかしいガルポの人(佐藤あんこさん)が来た話などをした。
おすすめされたものは忘れないよう、PCの画面を雑に撮っておく。
東京Qチャンネルの話を聞いていたらいつの間にかイベントがおわっていたので、どこか飲み屋に入ってもうすこし話をしましょうと、駅近くの地下にあるワンオペの焼きとん屋に入った。なかなか来ない串盛りを待ちつつ、buの人たちがところどころよくわからない会話をしていたけれど、たぶんハンターハンターのことだろうとおもう。それから、佐藤聖子が好きといってもみんな好きな部分がちがうし、自分では気づけない良さに他の人が気づくかもしれないから、耳はたくさんあったほうがいいという話をしたような気もする。
どういう流れからそうなったのかはわからないけれど、タイさんの口から「横山輝一の『夢のパラシュート』」という言葉が発せられて、自分以外の人間が『夢のパラシュート』と発声したのを耳にしたのは後にも先にもこの時だけだったから、あまりのショックでそれ以降の会話は忘れてしまった。無かったことにされている横山輝一のファンハウス時代、二枚組ベスト盤のライブサイドにはいっている『夢のパラシュート』を父親の車でかけていたら、あまりにもうっとおしくて長すぎるコール&レスポンスに「いますぐ止めろ」と怒られた話をした記憶だけはある。
そのあと、ブログを書くのがたいへんなのでもし暇だったらブログ書いてくださいとゆるい感じでハタさんからアカウント情報をもらい、西のほうでは宮部ひかりのことがまだ全然知られていない雰囲気だったから宮部ひかりのことを書きますと宣言した。ブログを書くのがたいへんだといっていた人たちはその後、書籍化にあたりもっと苦しむことになる。
名残惜しかったけれどbuの人たちとは終電前に別れて、自分は東梅田にある行きつけの個室ビデオ屋にチェックインした。ここでのディグの泉星香じゃなくて成果はこれまた特筆すべきものだったのだけれど、それはまた別のお話。
ハタさんと鯔さんと会って、会話の化学反応っていうかその爆発が凄すぎて家についても熱気がまだ残ってる
— 他意 (@thaithefish) September 1, 2018
昨日は架空のハンドクラップを入れる怪しげな集団の方々とお話ができて、とても楽しい夜でした。存在が定かではない伝説の大陸の言語を幼い頃から覚えさせられていたムスカが、ラピュタで実際にその言語を目にした際の驚きと喜び、それを自分は昨夜の「大本友子」という言葉に感じました。
— 原子心鯔 (@AtomHeartMullet) September 1, 2018
昨日のライトメロウウエスト、金澤神が来阪ということで福井から90年代シティポップ記録簿のハタさんが来てくれて我々とlightmellow的トークをしていたらそこにガールポップ鬼神?の原子心鯔(ボラを愛する男)さんがスッと現れて結局そのままヒロミやフミヤの後輩なんかも合流して朝まで大変だった。
— ひきわりステーキ (@INDGMSK) September 2, 2018
誰一人顔出ししてないしボラさんと交流もなかったのに会場の外でパソコン開いて音楽聴いてるという違和感をもとにlightmellowbuだと捕捉されたのすごかったな。
— ひきわりステーキ (@INDGMSK) September 2, 2018
昨日はハタさん、ボラさんという90年代トップディガーのお二人と台車、タイ、方便凌の掛け合いが見れて良かったです。
— らるぷり (@La_reprise) September 2, 2018
二〇二〇年六月一七日